リファー 菊野里絵さん

蘇れ!美しい村!飯舘村で企業が取り組む農業事業

東京生まれ・東京育ちの私は、今から16 年前、東京都内で会社勤めをしていた時に新規就農することを思い立ち、脱サラを決意しました。農業を志した理由はズバリ、幼い頃の原体験です。
私の祖父母が福島市で果樹園を営んでおり、子どもの頃は夏休みに遊びに行き、畑の桃をおなかいっぱいになるまで食べるのがとても楽しみでした。
大人になって、都会でのサラリーマン生活は日々あわただしく、気がつけば桃を食べることなく夏が過ぎていくような時もありました。
祖父母の果樹園の原風景、桃の記憶。単純ですが、それをもう一度体験したくて、桃をおなかいっぱい食べたくて、私自身が桃農家を目指し、ご縁をいただいた福島の県北の町で桃農家になりました。大変ながらもやり甲斐と楽しさを感じながらようやく軌
道に乗りかけた就農5 年目に、東日本大震災が起こりました。

震災後は農業からは離れ、学習塾の経営をしながらいろいろな仕事をしておりました。
そんな私に転機が訪れたのは今から4年前、現在の株式会社リファーの母体となる会社へ就職したのがきっかけです。
会社のグループで取り組むプロジェクトとして、飯舘村で農業を事業化する挑戦が始まり、私は、農業経験者であることから、このプロジェクトに携わることとなり、3年前にこの村に移住することとなりました。
内心、震災で一度は農業を諦めていた身ですし、これからの苦労や目の前の課題を考えると尻込みしてしまいましたが、会社として飯舘村のポテンシャルに期待する理由、廃校となった臼石小学校を拠点としてお借りすることができたことなど、これまでの経緯やタイミングなどに運命を感じ、「飯舘村の耕作放棄された農地を復活させる挑戦」に今、奮闘しています。

試行錯誤、改題解決と挑戦の毎日

この土地で農業を新規で始めるのは苦労の連続です。
まずは土壌。10 年近く耕作放棄され、さらに除染で表土を剥ぎ取られた土壌は、農地として全く機能しませんでした。重機で踏み固められてしまった畑は、雨が降れば水が抜けず、肥料分もないといった状態で、畑の土づくりで2 年の歳月が過ぎてしまいました。
次に気候です。飯舘村は山あいに位置し夏が短く冬が長い。中山間地域で寒冷であるという農業にとっては決して嬉しくはない環境です。それでも試行錯誤を繰り返し、諦めずに栽培を続けてきた結果、ようやく「ちょっと上手くいきそうな兆し」が見えてきたかな、と思える状況になってきました。
少しだけれども光が見えてきたんです。
一方で、私たちは企業の事業として農業に取り組んでいますが、現時点では採算は合わず、農産物の出荷だけでは経費すら賄えません。これは大問題です。国や県の補助事業や支援はありますが、我々の意向と合うものでなければ活用できませんので、現状は自力で奮闘している状況です。

厳しい状況ではありますが、事業を継続させようとするモチベーションはあります。
飯舘村は震災前、とても美しい牧歌的な風景が広がる村でした。
私自身、隣の霊山町に住んでいたときに、飯舘村を訪れるたびにそう感じていたんです。この村で農業を頑張ることで、そうしたかつての素敵な景色や区画を蘇らせることができるのではないか?と考えています。
現在お預かりした農地と我々が拠点とする小学校の周りだけでも、当時の風景を取り戻すことができればと、メンバー一丸となって、日々取り組んでいます。

作付面積2.4 ヘクタール。
小菊、さやえんどう、きゅうり、茄子、インゲン、ピーマン、パプリカ、小松菜、ほうれん草、かぶ、ビーツ、いろいろなかぼちゃ、バジル、ルッコラ、春菊、冬はいちごのハウス栽培をしています。

飯舘村と村の農業の未来を同時に見据えて

人間ではどうすることもできない外的要因で左右されるのが農業の特徴です。
特に天気。ここは中山間地で寒冷地域。傾斜地が多く、一枚あたりの田畑サイズが小さいという農作業的には効率が悪い条件です。併せて飯舘村の農業が抱える課題として、現在帰村し営農されている方々はご年配の方が大半であるという現実があります。
今までと同じやり方を続けていれば、村の農業は間違いなく途絶えてしまうと私は懸念しています。
飯舘村の未来と飯舘村の農業の未来を同時に考えた場合、農業が食べていける産業となり、村の利益・、魅力化に寄与することが望ましいのは、誰しもが思い描くストーリーではないでしょうか。もちろん私も一緒です。
このゴールに向かって、産業として農業を発展・継続させるには若い世代の後継者や新規に就農する方の参入が欠かせません。世界中で先進性のある農業事例としてスマート農業や無人の農業耕作機械など、農作業とテクノロジーを融合させた多数のソリューションが期待されています。
飯舘村でも、この潮目は農業の若い継承者、新規参入、農業に関わる業種業態や人材の増加が期待できるチャンスではないかと思います。
だた、これらの多くは、広大で平らな農地があってこそできる農業です。
飯舘村の農地はこの条件に適さない農地がほとんどですので、傾斜地の畑を整備してなだらかで大きな一枚の畑に替える、村の農地全体を作り替える整備を行政主導で進め、村の農業に新しい技術とそれに関わる人々が参入してくる環境にグリットを引き直す必要があると私たちは考えています。

私たちリファーの目標は、「まず食べていけるようになる」こと、中期目標として、「スマート農業や大規模な農業で近代的な農業の振興」を進めること、長期目標として「農業を起点に、飯舘村の人口が1 万人になること」を掲げています。
農業が元気な村で農業にかかわるさまざまな人々が入村してくる。
まだまだ始まったばかりですが、私たちは本気でこの村の農業に取り組んでいます。

<お問い合わせ>
株式会社リファー (飯館村臼石字田尻127-1)
TEL:0244-68-2501
FAX:0244-68-2502
Instagram:@refur.iitate