La Kasse オーナーシェフ 佐藤雄紀さん

飯舘村で「自分の店を持つ夢」を叶えたい

飯舘村で生まれ育ち、高校生の頃に料理に目覚めました。
将来は「飯舘村で自分の店を持つ!」そう決めて、卒業後に郡山市にある日本調理技術専門学校(Nitcho)に入学し、夢の実現に向けて進んでいました。
卒業後は通っていた学校で教員アシスタントとして就職して経験を積むことが決まっていましたので、その準備に追われていました。
ところが、明後日が卒業式、というタイミングで震災が起きました。

郡山市で一人暮らしをしていたので、飯舘村の実家の家族と連絡が途絶え、とても不安な数日間を過ごしました。ようやく連絡が取れ、家族の安否が確認できたときは一安心したことを今でも覚えています。

新年度を迎え、本来でしたら学校も新入学生を迎え活気あふれるはずなのですが、当時は授業再開の目処が立たず、学生不在のまま職員だけが学校に集まり、
不安な毎日を過ごしていました。故郷の飯舘村も避難計画のことで情報が錯綜していたので、家族や親戚、仲間も村もどうなってしまうんだろう?と、とても心配でした。

2011年の5月の連休明け頃、家族が川俣町に避難することになって、学校も再開し、ようやく教員アシスタントの仕事がスタートしました。

卒業したらいろんな調理現場で経験を積んで〜なんて将来のプランも詳細にイメージできていたのですが、もう村には戻れないかもしれない、そうなると、故郷でレストランを開くという夢もあきらめるしかないと当時は絶望的な気持ちになっていました。

しかし、教員アシスタントとして3年目を迎えた頃、両親から「もうすぐ避難指示が解除され、村に帰れそうだ」という明るい連絡がありました。
避難指示解除の吉報は、あきらめていた夢を、「もう一度実現させよう」と僕を奮い立たせました。

経験を積み重ねて10年

教員アシスタントという現場を3年経て、ベルカーサ福島というウエディング専門の調理場へ転職し、3年間勤めました。
この後ご縁があり、道の駅国見の立ち上げから携わる機会をいただき、3年間取組みました。更に、地産地消をコンセプトとしたレストランBestTableで1年間、調理場の経験を積みました。
卒業したらいろんな調理現場で経験を積む、というプランを着々と実行するため、夢中で働いていましたね。

飯舘村での独立開業が具体的になったのは、道の駅国見で働いていた頃です。
飯舘村は避難指示が解除され、帰村した方々が元の生活を取り戻そうと一生懸命頑張っている話も聞いていました。

同時に「道の駅までい館」が完成し、当時の村長から「ここで料理をやらないか?」という大変ありがたいお声がけをいただきました。
これも経験を得る絶好のチャンスとも考えたのですが、どうしても自分のお店を飯舘村でオープンさせたいという思いが強く、「このお話をお断りするのであれば、いよいよ腹を括らなければならないな」と考え、独立開業を決心しました。

一皿に心を込めて

今の店舗物件をご紹介していただき、敷地の整備、造成、土木工事、店舗の改装など、家族や親戚、友人・知人など総出で開店準備し、「La Kasse」(ラ カッセ)」は、2022年6月にオープンを迎えました。
自分一人では、とてもじゃないですけど、スタートを切ることは不可能でした。家族をはじめ、村の方々の支援とご協力があって実現できました。
僕は小さな頃から両親はもちろんなのですが、地域のいろんな方々に面倒を見てもらい、育ててもらったという思いが強くあります。なので、この村で自分の店を持つことは、「料理好きな自分が、料理人として故郷でお店を開き、地元の食材を使った美味しい料理でお世話になった方々に恩返しがしたい」というのが一番の理由なのですが、恩返しどころかまた飯舘村のみなさんにお世話になってしまって(笑)

店を始めて7ヶ月、勤めていた頃には決して犯さないようなミスを何回もして、独立してみて始めてわかること、気づくことが多々あり、毎日奮闘しています。

まだまだ課題がたくさんありますし、料理人としても、レストランとしても道半ばなのですが、飯舘村でレストランをやるからには、地元の食材を積極的に取り入れることが料理人として必然であると考えていますし、生産者の方々と積極的にコミュニケーションをとって、料理にどんどん取り入れ、提供していきたいです。

現在は、「La Kasse」(ラ カッセ)」で飯舘村の生産者さんとお客さんが料理をキッカケに繋がれるような演出や工夫・接客はできないものか、模索しています。

そして、かつてのブランド牛「飯舘牛」を復活させようと牛の飼育をしている方々もいるので、復活にとても期待していますし、料理人としてとても魅力的で、いつか自分のスペシャリティーを完成させるなら絶対に「飯舘牛で一皿」と考えています。料理人としてできる限りの協力をしていきたいです。

やがてこのお店の面白さや僕の作る料理が「飯舘村に来る理由、・その1」になればいいな!と思います。

飯舘の旬を味わいに、是非いらしてください!

<お問い合わせ>
「La Kasse」(ラ カッセ)
電話:0244-42-1228
場所:福島県相馬郡飯舘村二枚橋本町193-3