農事組合法人13区営農組合 代表 細川 强さん

熱き思いを胸に農地の再生に挑む
農事組合法人「13区営農組合」代表 細川 强さん

農地再生の担い手となるべく立ち上げた任意の団体を法人化。
全組合員が関わる公平な運営を旨とし、業務の拡大を図ってきました。農地を預ける地域住民への利益還元も大切に考えています。
農地を守り、価値を生み出す挑戦、耕畜連携の取り組みも評価され、2024年9月、
第65回福島県農業賞「復興・創生特別賞」を受賞しました。

私達、13区営農組合のメンバーは8名。
震災前はそれぞれが仕事につきながら兼業農家として農業に携わってきた方々です。石屋さん、スーパーで鮮魚を扱う仕事、ホテルマン、ダンプの運転手、建設業、職種は様々。自分は高速道路の舗装工事の仕事をしていました。

震災があって、メンバーはそれぞれの避難先で避難生活をしておりましたが、2015年ごろから避難指示解除に向けた農地保全の準備が始まりました。
初めは草刈機を持っているメンバーで耕作放棄された農地の草刈りから始まり、そのメンバーの中から現在の8名で任意組合・13区営農組合を設立しました。
設立のきっかけは村の担当者から制度や助成金、補助などのアドバイスがあり、背中を押してもらえたから。
組合を設立して最初に取り組んだのは、ナタネやひまわりなどの景観作物の栽培。
休耕農地や田畑は土が痩せ、除染した都合で山砂が入ってしまっていました。
養分が枯渇してしまっていて、食用の作物を植えるには土壌を元に戻す必要がありました。
土壌改良しつつ、見て楽しめ、避難解除されたことを発信する観光資源にもなり得るのではないか?という考えで景観作物を作付けして、土壌改良する資金稼ぎを狙いました。
スタートは38haから。小さなひまわりでしたが、花を咲かせ土に帰し土起こしをして。
これを年々繰り返し62ha、83haと面積を増やしていきました。
やがて大輪のひまわりが咲き誇り、観光客やドローンで撮影する方々がたくさんみにきてくれるまでになりました。

そして迎えた、令和元年。
次のステップに移行すべく、農業法人13区営農組合を設立。法人化し私が代表を務めさせていただくことになりました。
作付けもWCS稲発酵粗飼料(ホールクロップサイレージ、WCS)と牧草に本格的に取り組み始め、牛の餌にする飼料用米(稲の米粒が完熟する前(糊熟期〜黄熟期)に、穂と茎葉を同時に刈 取り、サイレージ化するための粗飼料)を91ha作付けしました。

土壌がだいぶ回復してきた状況でしたが、まだ線量が不安でしたからね。初めは人体に摂取されない家畜用の作物で数値を見てみようをスタートしました。
毎年順調に作付けを増やし、現在は13区以外の行政区の田畑もお借りして作付面積を増やして行っています。

今のメンバーでやりきれる120ha が目標です。
飼料作物の生産と併せて村から委託されている均平作業、深耕作業、草地更新作業などの復興支援作業を請け負い、我々の保有する農業耕作機械を活用しています。

こうした取り組みの先駆者として、毎年挑戦の連続ですが、やれば稼げる!って納得できるモデルをメンバー全員で目指しています。

全村避難期間中は避難先から通ってこの田畑の手入れをしていましたが、柳や茅が生い茂っていて、猪や猿が走り回っているような状態でしたからね。今の景観を改めて眺めながら「やって良かったなー」と思っていますよ。

我々の取り組みを多くの方々が注目してくれていますし、共に歩んできた今のメンバーにとても恵まれたと実感していて、取り組み、成果、実績、既に村の基幹産業になり得る未来が見えてきている気がしています。

農業は天候に左右され、産業として不安定な側面もありますが、我々の事例を見て他の方々も「やってみよう!」って思ってもらえたら嬉しいですね。
村外の方々の新規参入も大歓迎です。まだまだ村で遊んでいる土地がありますので、そうした方々に、どんどん参加してほしいです。

飯舘村の未来を想い、我々8人は、生まれた故郷に戻ってきて郷土に愛着を持ってこの仕事に取り組んでいるんです。若い方々に「飯舘村に稼げる仕事がある」って思ってもらえたら、継承してくれる次世代が増えて飯舘村が盛り上がって行くのではないかと願っています。